神保町ホテルのコンセプトメイク
神保町の本屋街にホテルを建てるプロジェクトマネジメントが、前職での最後の仕事でした。当時の私は管理職にほぼ移行し、お客様相手の仕事に携われなくなることに寂しさを感じていたので「赤坂さんが最後まで面倒をみてくれるなら発注する」と先方から言われた時は、社内事情はさておき素直に嬉しかったです。
会社からもOKをもらって仕事がスタートしました。しかしそれからが大変で、オーナーと運営サイドが作りたいホテルのコンセプトが違っていたので、着工してからもデザインが決め込めない状態が続きました。工程に迫られながら提案を重ねて、ようやくコンセプトは一本化され、神保町の街並みにお似合いのレトロモダンなホテルが完成しました。
東京オリンピックが決まり都内には小規模なホテルも増えています。ホテルは内装だけで繁盛する訳ではありませんが、やはり他には無い個性を持っていないと長期的には戦えません。
小さなホテルであればあるほど、「此処が好き」「このホテルに泊まりたい」というファンを増やしていかないと…。それには、ホテルの空間とサービスを貫ぬくコンセプトが必要です。ひとはその世界観やストーリーに共感共鳴して、それでファンになるのでしょう。
だから、コンセプトがぶれていたり、コンセプトと違った仕上がりになってしまうことはとても危険です。このプロジェクトは体制が複雑だったことや途中で担当者が代わる事態もあって、それぞれの立場で生みの苦しみを味わっていました。でも、いいホテルにしたい思いは誰もが一緒でした。
世界に一つだけの小さなホテルの竣工を見届けて、私は会社を退任しました。あの時のプロジェクトメンバーはどうしているのかな? 人気のホテルなのだと噂で聞いて嬉しいです。東京にご用の方は、神保町にお泊りしてみるのも粋ですよ。
HOTEL「SAKU REN JIMBOCHO」 https://saku-ren.com/
施主 :(株)リヴ
ホテル運営:(株)咲楽
設計;(株)翔設計/ 施工:(株)伊勝/ 造作家具:(株)立米 /サイン:三沢工芸